ドイツワインとエコロジー
ドイツでは、ブドウの収穫量の制限、農薬を極力排した有機農法、EC統合に伴うヨーロッパ対策の検討の3点がされているという。そしてこれらを提唱、推進しているのが、全ドイツ銘醸ワイン生産者連盟(V.D.P.)である。1910年に結成されたV.D.P.は約170者が加盟、ドイツの全ブドウ栽培面積のうちの約3%がドイツ各地のメンバーの所有である。品質を重視したこの連盟への加盟には、ブドウ畑の立地条件、収穫量制限、ブドウの品種や糖度に加え、殺虫剤、除草剤の使用禁止など、ドイツワイン法より厳しい基準を設けた、メンバー相互の試験が課せられる。また、V.D.P.内には防黴剤の使用も禁じた100%有機農法の組合もあり、これを実行するには・「主に人件費による10%のコストアップと10〜20%の収量低下」を覚悟しなければならない。森林の酸性雨の影響の深刻なドイツでもあり、「長期的に見れば、自然にやさしいということは、必ずそれなりの見返りがある。経済と環境の両立こそが文化である。」(現VDP総裁、M.ザルム・ザルム公爵)
このようなV.D.P.の基準に適した加盟者のワインには、キャプスル・シールにブドウと鷲をデザインしたV.D.P.ロゴマークが使用されている。
エコロジー ドイツ・ワインにおける 緑の革命
生産量は全体の5%に及ばず、大きいとはいえないが,ドイツの白ワインは高品質を伴ったひとつのスペシャリティーといえる。ライトでエレガントで、低アルコールのワインは先進国で需要が高い。
ドイツの新しい世代に広がる動きで、「緑の革命」と称されるものがある。このことでドイツ人はエコロジック・ワインのパイオニアといってよい。それはブドウ畑の土壌から始まる。以前のドイツのブドウ畑を思い起こしてみると、雑草が少しだけ生えている、といったもので、良いブドウ栽培者にとって、雑草の無いきれいな畑は誇りであった。しかし,今日の畑はすっかり緑で覆われている。クローバーなどの雑草を植える継続的な畑の緑化であり、これは多重の効果を生む。硝酸塩,窒素などをあまり必要としないことから肥料を少なくすることができる。すなわち、地下水を汚染しない。優れた栽培家はヘルベツィーデ(除草剤)も使わない。有機物の多い土壌に
おいては養分の循環が盛んである。
生産量の限定の関しては,haあたりの収穫量が8〜10klくらいで、それを超えることはなく、少ない収穫量は良い品質と、健康なブドウの樹を保つことにつながる。健康な樹は、ペロノスポラ、オイディウム、ボトリティスなどの黴による病気の感染から逃れているため、ペスティツィーデなどの殺菌剤を控えることができる。除虫に関しては、フェロモンを用いて、蛾などの雌を引き寄せる。雌雄の一方がいなければ、繁殖することはないので殺虫剤の使用を最小限に抑えられる。
国家による環境の管理は厳しく、土壌の硝酸塩の含有量の検査を行っている。州の保険所による,農薬の制限もある。ドイツのエコロジック・ワインは世界でも高レベルであり、味覚ばかりでなく、自然に対してもプラスになるよう配慮されている。